症状
「セミでもフルでもバイナリー状態になる」ということで修理希望でしたので、組み込み状態を含めて点検と修理の為、ロアで動かせる状態で送っていただきました。
分解前の作動確認
- 「セミでもフルでもバイナリー状態になる」の症状が再発するか確認
セレクターをSEMIでトリガーの引き方(二通りの方法でテスト)で異なる動作をする状態でした。
Aパターン: トリガーをチョンっと引いて動かした場合は1発分の動き(通常の動作)
Bパターン: トリガーを引き切って1発、放して1発の動き、いわゆるバイナリー状態
本来のバイナリーはどんな引き方をしても引いて1発、放して1発なので、トリガー関係の問題の可能性が濃厚である。 - セレクターをAUTOで①の症状を考慮して確認
素早くトリガーを引いた場合は①のBパターンの現象になった。
ゆっくりトリガーを引いた場合、引いた時にバースト、放したときにバーストとなった。
トリガーの検知がトリガーを引く途中まではON、引き切るとOFF、放す途中からONになって完全に放すとOFFという検知をしていることがわかる。 - 設定を初期化して確認
セレクターをSEMIでトリガーを引きながらバッテリー接続したところ、「基本プログラム」にならず、ブザー(ピピッ)が鳴りセンサーテストモードになりました。
セレクターをAUTOで同様に起動したら、ブザー(ブブッ)と鳴って「半自動装填モード」で起動しました。
やはりトリガーを引き切った状態でOFFと検知しているので「基本プログラム」に入れない状態でした。
分解して各部の確認を行います。
- ロアフレームからメカボックスを取り出して分解します。
G&G様「WildHog」は元々ETU用のトリガーの為、そのままでは陽炎2型Eでは使用できないので、社外トリガーを使用したのだと思います。(ETU用のトリガーでも加工すれば使用可能)

- トリガーのセンサーの反射部分がかなり傾いていることが確認できます。
左画像はトリガー開放状態で、右画像はトリガーを引き切った状態です。
右画像の状態ではセンサーから照射された光を正しくセンサーに反射できません。

- 右画像の赤〇部分のメカボックスの角や右画像の赤〇部分は曲がりがきつい部分は配線を傷つけやすいポイントなので注意が必要です。

- FET基板を取り外して配線を確認したところ、バッテリーのプラス線から分岐して、FET基板に接続されている基板電源兼ブレーキ線(赤い細い線)に心線が露出する傷がありました。
FETを破損させる可能性があるので配線は全て交換となります。

- 修理の方向性が決まりました。
心線が露出する傷があるので配線を全て交換します。
トリガーの形状で相性が悪いのでトリガーの一部を加工修正します。
トリガーの加工修正
- トリガーの比較画像
左画像が組まれていたトリガーで、右画像のトリガーは東京マルイ様のM4系トリガーになります。
トリガー先端のセンサー反射部分がトリガー開放状態でも最初から角度が付いています。
※全ての社外トリガーが該当するとは限りません。

- トリガーの反射面の修正
このトリガーはノーマルスイッチを想定した形状なので光センサーに適した形状する必要があります。
左画像は修正前の状態で、右画像は1.2㎜のプラ板を2枚重ねて貼ってあります。
貼ったプラ板を削って程よい形状に仕上げます。

- トリガーが開放時に反射面がほぼ垂直になるように線を付けておきます。(この線以上は削らない)

- トリガーを引いた状態(引いている途中)でも反射面がセンサーに向くような形状にします。
最初はカッターでざっくりと粗削りをして、その後は棒ヤスリで反射面を若干局面に削ってきます。
(曲面に削るのが難しい場合は、プラ板1枚にして垂直になるように削るだけでも問題ありません。)

- この状態でもトリガーが開放状態、引いた状態で垂直な部分(センサーが反応する光が当たりやすくなる)があります。

- 制御基板側に取り付けてセンサーとのクリアランス等を確認している時に気づいたのですが、左画像のように基板固定ネジにトリガーが干渉して戻りきらない状態になっていました。
右画像は分解時ですが、赤〇部分の詰め物はトリガーがネジに干渉するから貼ったとも思えます。

- 左画像の赤〇部分はネジが干渉しないように角を削ってあります。
右画像はメカボックスに取り付けてトリガーが開放状態でトリガーが完全に戻っているのが分ります。

- トリガーの開放状態が正常になりました。

- 元々ストロークが長いトリガーなので、左画像の赤〇部分のように新規に詰め物を貼りました。
右画像は反射部分の加工後で曲面に沿ってアルミテープを貼ってあります。
加工跡は黒色ソルダーレジストを塗布してあります。

- 左画像の赤〇部分の穴はトリガースプリングが掛かる部分なのですが、径が大きくスプリングが斜めに掛かりトリガープルに影響していました。
右画像は簡易的ではありますが、接着剤を流し込みで穴を埋めてから1.0㎜のドリルで穴をあけ直しました。

配線交換の終わったFET基板の取り付け
- 配線は鋭角に曲がる部分は予め曲げ癖を付けてから這わすようにします。
一応、今回は修理前のように這わせることとします。(取扱説明書と異なる部分がありますが、どれが正しいというのは特に御座いませんので、配線が傷つかないように施工してあれば問題ありません。)
左画像のようにメカボックスの配線止めに引っ掛けて引っ張りながら這わすと被覆が剥けたりします。
サンドブラストのような表面のメカボックスなので強く擦ると被覆が削れることがあります。

- 特にモーターマイナスの線は右画像のようにしっかり癖をつけます。

- 赤〇部分でしっかり癖をつけます。
赤色のバッテリープラス~モータープラスの線は、メカボックス下部(グリップ側)は13㎝の長さにします。

- 赤〇部分とピニオンギヤが通る部分(よく傷が付くところ)を収縮チューブで保護します。
バッテリーマイナスと基板電源兼ブレーキ線(赤い細い線)を纏めて収縮チューブに通してあります。
黄色の半透明部分は配線2本+収縮チューブで高くなっているので捻ってなるべく平らになるようにします。
(この部分は取扱説明書と異なります。)

- 赤〇部分でバッテリープラス線と基板電源兼ブレーキ線(赤い細い線)を分岐接続します。
このタイプのメカボックスは赤〇部分から内側に広い空間があるので、分岐接続するのに適しています。
右画像のように分岐部分をカッター等で心線を切らないように注意しながら被覆を剥きます。
右画像は容易にハンダ付けが出来るようにマスキングテープで配線を固定します。
クリップ等を使用する方がいますが、クリップで基板や配線を固定すると致命的な傷をつける場合があります。

- ハンダ付けをする部分に無洗浄タイプのフラックスを塗布します。
フラックスはハンダ付けをする部分の酸化除去と溶けたハンダの表面張力を抑制する作用があり、ハンダ付けを容易に行えます。
(ハンダ付けが苦手な方にはフラックスを使用することをお勧めします。)

- メカボックスに戻して位置の再確認をします。
問題がなければ、再度取り外して収縮チューブでバッテリーのプラスとマイナス線を纏めます。
ハンダ付けした部分の先が鋭利になっている場合は収縮チューブを突き破る可能性があるのでニッパー等でカットします。

- ハンダ付けした部分を収縮チューブで保護してメカボックスに組付けます。

- 配線押さえが付いていましたが、曲がって配線を傷つけそうだったので広げ直します。

- 配線止めで固定した状態です。
左画像の赤〇部分は配線を傷つけやすいのでモーターマイナス線も収縮チューブで保護します。
黄〇部分はトリガーで傷付けやすいので要注意箇所です。
右画像の赤〇部分は角度がタイトな箇所で配線も収縮チューブで太くなっているので、弊社の「Shiranui Multipurpose Lube」を数滴塗布してから組付けています。

- メカボックス外のヒューズとミニコネクタを取り付けます。
トリガーを取りつけてメカボックスを閉じます。
センサーテストを行ったところ異常はありませんでした。
全てのパーツを組み戻して作動テストを行いました。
トリガー関連の問題も解消されて正常に動くようになりました。
- セレクターSEMIでトリガーを引きながらバッテリーを接続して「基本プログラム設定」になるか→OK
- セレクターポジション設定でSEMI、AUTO、特殊セレクターのレバー位置を設定→OK
- セレクターSEMIでバッテリーを接続して「センサーテストモード」起動→OK
- 各セレクターポジションで正常な反応をするか→OK
- 各セレクターで正常な動作をするか→OK
- バッテリーを一旦外して、セレクターをAUTOに切り替えてバッテリーを接続して「半自動装填モード」にて起動するか→OK
- 半自動装填モードの動作は正常か→OK
今回の問題点
- 社外トリガーの形状認識不足に起因する動作安定
- 弊社製品の組み込みミスによる配線損傷
弊社製品の修理としては配線交換でした。


